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不死身の特攻兵

鴻上尚史 著

大東亜戦争において何度も特攻を命じられるも生還した佐々木友次という人の話。ベテランのパイロットだったために陸軍の特攻第一号に選ばれ、死んでこいと言われたが爆弾を落して帰ってきた人である。それも何度も。

第一章は著者が佐々木氏を知ったいきさつ。第二章は佐々木氏の伝記。第三章は著者の佐々木氏へのインタビュー。第四章は著者による戦争や特攻に関する考察。

第一章は導入である。

第二章は物語として面白かった。戦争や特攻といった理不尽なものに対して自分の信念を貫いた佐々木氏の生き方や考え方が痛快である。

第三章のインタビューでは佐々木氏が繰り返し口にした寿命という言葉が印象的だった。人間は寿命がくれば死に、それまでは生きる、というものである。たとえ戦死であろうともそれがその人の寿命であるとの認識であるようだ。この考えにはとても共感できる。

第四章はかなり客観的に書かれているように思う。その上で著者自身の考えを述べているので読みやすかった。しかし読み進めるにつれてだんだんともやもやが溜っていった。当時の日本を支配していた空気があまりにも重苦しい。しかもその空気は、現在の日本にあるものとほとんど同じであると感じた。ここ最近僕が感じているこの国の暗い部分は大東亜戦争のころからなにも変らずに受け継がれているようである。せっかく無様に負けたのに本当の意味での反省を一切していないためか、なにも変っていない。余りにも勿体無く、戦没者にも失礼である。

もっと歴史を勉強し、今の生き方に反映しなければと考えさせてくれる本だった。